2010年09月13日

ワトルス

ワトルス(オーストラリアの国花ーアカシアの一種)

Wattles

ワトルス  どれだけの種類のワトルスがオーストラリアにあるかほんの少しの人しか知りません。850−1,000種類にのぼるワトルスについて植物学者でさえも正確な答えを出せません。




 

また、それらの中で、ある種類はローカルな植物なのか外から入って来た物か区別の困難な物もあります。ミモサブッシュ(Acacia farnesiana)はその良い例です。ミモサはしばしばアフリカから導入された植物として記録されていますが、乾燥地帯のアボリジニは蛇にかまれた時の治療処置として使用する方法を確立しました。また、イギリスのエンドウ豆と同様に調理した種子をまだ青いうちに食材として使用していることも記録されています。

 
 一般的に、ワトルスは潅木的なものから中サイズの木にまで広い範囲に渡っています。本物の葉っぱは再羽状裂となっているかもしれませんが、偽葉に変化させていたり、あるいは枝が変化して葉っぱとしての役割を果たしていたりとさまざまです。花は、頭状花か円筒状の穂錘花の形をしています。また、実は黒か茶色の種子膜に被われた種の入った豆です。ある種の種子はさやの中にある種子を留めている多肉質の構造をした仮種皮を持っています。仮種皮は白から始まって黄色、赤とさまざまな色があり、白は蟻を惹きつけ蟻が仮種皮を集めている間その種をばら撒いています。色のついた仮種皮は種子ばら撒き役となる鳥をひきつけます。

 
 ワトルスは採集家に多くの食物を提供し、特定の種類は食用の種子、樹液そして根を持っています。種子と根は通常ローストし、樹液はそのまま食べたり、あるいはお湯に浸してゼリーにしたりします。ゼリーを食べる時に甘味料を加えたりあるいはもともと甘味成分を含んだ種類の樹液を使用します。アボリジニが使用していると記録してあるワトルスの種類は後で紹介します。


 栄養的に、ワトルスは高蛋白ですが肉や大豆と同じように完成された蛋白質かどうかはまだ定かではありません。種子に含まれるその他の主な栄養成分は脂肪(いくつかは複不飽和脂肪酸)、複合炭水化物、繊維質そしてさまざまな微量金属成分などです。ワトル樹液のほとんど100%が水溶性繊維質で食用の根は炭水化物とミネラルを含んでいます。

 
 ある特定のアボリジニグループに対してのワトルシードの重要性に言及した話は、非常に稀です。アリススプリングス北東にあるトライバルランドのアルヤワラ(Alyawarra)族は、伝統的に15種類の種子を使用しそのうち何種類かは一年を通して常食として使用していました。アボリジニは主食生活の重要度(栄養摂取とドリーミングの両方に対して)によって、潅木種子系と草原種子系に分かれていました。

 
 食材としてワトルシードに大きく頼っていたのは、ドライランド(乾燥地帯)のアボリジニでしたが、他の部族が無視していたわけではありません。6種類のワトルシードが、シドニー南のビークロフト半島のアボリジニによって食材として使用していた事が記録されています。西アーネムランド(Western Arnhem Land)のマヤリ族(Mayali)は、2種類のワトルシードを食し、さらに15種類は文化的要素でした。キンバリー(Kimberley)北部のカルムブル(Kalumburu)地区では、1種類のワトルシードのみが食されました。

 
 シドニー近郊のアボリジニは、少なくとも3種類のワトル(A.longifolia, A.sophorae, A.suaveolens)を使用しました。これらは粉に轢くよりむしろ乾燥させないで蒸した後に青い状態で食されました。乾燥地域の人々と異なり、シドニー近郊のアボリジニは主食としてダンパー(Damper−一種の堅パン:熱い灰の中で焼く)を持っていませんでした。シドニーゴールデンワトル(A.longifolia)もまたマレット(ボラ科の魚)漁の時期に開花することからご当地ブッシュカレンダーの中で使われています。

 

ワトルシードを食材として使用することは、その豊富な収穫量からも可能です。マルガ(A.aneura)は、今でもオーストラリアの乾燥或いは亜乾燥地帯の広い地域で目立った存在ですし、ウィジュティブッシュ(A.kempeana)もまた一般的です。多くの種類の種子、特に宿存性仮種子、を食品にすることが可能です。これらの仮種子は非常に油性分が多く種子の脂肪含有量に大きく寄与しています。多くの仮種子のある種子は、伝統的に水がたくさん入ったクーラモン(アボリジニが水や赤ちゃんを運ぶ入れ物)に入れて収穫します。種子は手でこねて仮種子を分離し、油の味とともに水で味付けをします。出来上がった飲み物は、普通の真水よりも面白い味がするだけでなくエネルギーを与えてくれます。半加工された種子は元に戻し、ダンパー(堅パン)にすることが出来ます。 

 
 下記に明記してあるグリーンワトルシードの処理法は、どのような食用ワトルの種子にも適用できます。一般的に、青い状態で食べられる種子(例:A. coriacea, A. farnesiana)は大きいか、あるいは多くのサヤに入っている中サイズの種子(例:A. aneura, A. longifolia, A. suaveolens, A. sophorae)のある種類からなっています。

 

1.      未熟のレギューム.(野生ヤブツルアズキーアズキの祖先)を刈り取り、青い
 種子を収穫する。

2.      早く燃える小枝で火を起こすか、あるいは熱い灰を使用する。

3.      種子が蒸される時間を見ながらサヤを調理する。

4.      サヤを開けて、中の種子を取り出す。

5.      種子をそのまま食べるかあるいはグリーンピースを食べる要領で食べる。種
 に付着している色の付いた仮種子を含むこと。

 

未熟の青い種子を蒸すことは、抑制酵素の栄養破壊活動を減少させます。この処理法はまた樹液の渋みを減らし、種子を取り出しやすくします。

 乾燥したサヤや地面から収穫された種子は、下記の方法で粉末処理されます。

 

1.堅い殻に被われている種子を皿に置く。

2.火の付いた炭を加えて混ぜる。軽く炙ることで、種子の殻が剥がれやすくなり
  ます。

3.ヤンディング(アボリジニが粉を轢く時に使うテクニック)することで全ての灰、炭、種子殻を取り除きます。粉に引く前のこの掃除は、食物繊維への種子殻の混入を減少させます。

4.残った種子を轢く。

5.種子を炙り、掃除した後、轢いて粉をつくり、あと水でこねて調理してダンパー(堅パン)が出来上がります。

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